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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

女王様のお引越し

ハニー丸

 

 イタリアのとある6月。
 この国ではもう小学生の息子は夏休み。
 二人でお昼ご飯の最中に、突然外が真っ暗で向かいのマンションすら見えなくなった。
 何?何なの?

 窓に近づいて見ると小さい黒い粒々の嵐。
 更によく見ると、それは何と蜂の大群。
 「わー、何が起きたのよっ!」パニック状態の私達の所にご近所さんが来て、
 「蜂がこのマンションの前の木に巣を作ろうとしている。今、養蜂家呼んだから。」と。
 何でも昔は消防の仕事だったけど、蜜蜂は希少生物に指定されたので、今は消防署では養蜂家の連絡先をくれるだけらしい。
 幸い、蜂蜜大国イタリア。この周囲だけでも3件も連絡先をくれた。

 やがて人の良さげな養蜂家、ジョルジョさん登場。
 「うん、木が高すぎるから消防だね。」
 養蜂家が要請すれば消防が梯子車出してくれるそう。なるほど。
 梯子車を待つ間、黒く覆われた蜂の木の近くでジョルジョさんは陽気に歌を歌いながら息子に蜂グッズを見せてくれた。
 宇宙飛行士を連想させる養蜂家の服、これで煙を出して蜂に落ち着いてもらうんだよと燻煙器。
 息子、大興奮。
 さすがプロの余裕です。
 私、蜂蜜大好きなのにあんなに怯えて、ごめんね、蜂。

 さて梯子車も到着。
 ジョルジョさんは颯爽と梯子を登って行って魔術師のような手捌きで煙を操っていた。
 しばらくして無事に降りて来た。
 顔を覆う網目でよく見えない帽子でも、とびっきりの笑顔が見えていた。

 「公共の木だからね。蜜蜂じゃなければ駆除費用は市が払ってくれるんだけど、蜜蜂の場合は無料。
 ただし女王蜂はもらっていいんだ。
 今日のは蜜蜂だったからラッキーだよ。
 ただね、うちの農園が気に入らなければ飛んで行っちゃうんだけどね。
 全ては女王次第さ。」
 ジョルジョさんは大事に女王様を抱えて、帰っていった。

 私はその車に積まれていた蜂蜜を購入。
 濃厚なタンポポ蜜。まずは蓋を開けて香を吸い込んでからパンに付けるのが我が家式。
 イタリアの空の下で乱れ咲くタンポポとそこを飛び交う蜜蜂達の風景が脳裏に浮かぶ。
 女王様、そこの養蜂園気に入ってくれたかな。
 来年は今日の蜂たちが集めた蜜を味わえますように。

 

(完)

 

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